鉄の町で出会った、ソ連の巨匠。シェルバコフ油彩風景画

【福岡県北九州市八幡西区買取】
北九州市八幡西区のお屋敷の整理で、出張買取に伺いました。今回お譲りいただいたのは、ソビエトの画家ボリス・シェルバコフの油彩風景画です。
重厚な金色の額の中に、湖が広がっています。丘の上から見下ろす青い湖と、遠くまで続く森。二本のモミの木が、まっすぐ空へ伸びています。右下には赤いキリル文字のサインがあり、裏には日本語の作家プロフィールが貼られていました。長年、このお屋敷の壁に飾られてきた一枚です。
「いつ、どこで買ったのかは、はっきりわからないんです。買ったのは親ですから」
ご依頼主様はそうおっしゃって、少し考えてから、10代の頃の町の話をしてくださいました。
鉄王、鉄竜の町で過ごした10代
この辺りには「鉄王」「鉄竜」という町名があります。八幡製鉄所の社宅団地とともに生まれた名前です。ご依頼主様が10代だった頃、社宅には大勢の家族が暮らし、相生町の商店街はいつも人であふれていたそうです。
一番の思い出は、年末のことでした。この地域では、お正月のお雑煮にブリを入れます。ご依頼主様は友だちの実家の鮮魚店で、年末から大みそかまで手伝いをされていました。店じまいのあと、お礼にもらうのはお小遣いと、大きなブリが一本。それを抱えて家に帰る。ご両親が待つ家の壁には、この湖の絵が掛かっていました。
当時の町には、いろいろな行商の人がやって来て、近くで催事を開いていたそうです。「たぶん親は、あの頃の催事でこの絵を買ったんじゃないかな」。賑やかだった町の記憶をたどりながら、ご依頼主様はそう話してくださいました。
画家ボリス・シェルバコフについて
シェルバコフは1916年、ペトログラード(現サンクトペテルブルク)に生まれました。父はレーピンに学んだ画家です。レニングラード美術アカデミーでブロツキーらに師事して1939年に卒業し、ソ連邦国家賞を受賞、のちにソ連人民芸術家の称号を得ています。作品はトレチャコフ美術館や国立ロシア美術館に収められています。トルストイやプーシキンゆかりの地を巡って描いた風景画で知られ、1970〜80年代には日本の画廊を通じて国内にも多く紹介されました。
心のなかの町は、変わらない
ご依頼主様は進学を機に上京され、それからの町の変化にはお詳しくないそうです。「町の風景は、心のなかのままで、いつまでも変わらないんですよ」。そうおっしゃった時の穏やかな表情が、印象に残っています。
ブリを抱えて帰った年の瀬の夜も、この絵はきっと同じ場所にありました。絵の中の湖は、何十年たっても夏のままです。
査定について
サイン、額の銘板、作家プロフィールが揃い、作家の経歴が確認できる点を評価いたしました。額の金彩の擦れや画面の小さな傷みはございますが、鑑賞に大きな支障はありません。アジアアートでは、ロシア・ソビエト絵画をはじめ、洋画・日本画・古美術品の買取を承っております。ご実家やお屋敷の整理で出てきた、作家名のわからない絵画も、どうぞお気軽にご相談ください。




