清代 銅造水月観音坐像

【福岡県飯塚市買取】
今回ご紹介するのは、福岡県飯塚市でお買取りした、清代の作と当店で判断した銅造の水月観音坐像です。見どころと、時代や産地をどのように見極めたかをご説明します。
作品の概要
本品は輪王坐(りんのうざ)と呼ばれる姿勢で座す観音菩薩像です。右膝を立てて肘を乗せ、左足を波濤の彫られた岩座に下ろすこの姿勢は、水月観音の代表的な形式として知られています。頭上には透かし彫りの宝冠を戴き、幾重にも重なる瓔珞(ようらく)や、肩から流れ落ちる飾り紐が、見る角度ごとに違った表情を見せます。右手のそばには浄瓶を思わせる持物もうかがえ、観音菩薩らしい細部が随所に見て取れます。
像本体とは別に、唐木で波濤文を丸彫りした台座が誂えられており、観音様の坐す岩座と呼応して、海上の岩に座す構成を作り出しています。
水月観音という尊格について
観音菩薩にはさまざまな姿がありますが、本品を観音と断定できる根拠は、宝冠の正面に彫られた小さな坐仏です。これは阿弥陀如来の化仏で、観音菩薩の宝冠にのみ表される、経典に基づいた図像上の約束事です。これに、片脚を崩して岩に腰掛ける輪王坐と、波を意匠化した台座が加わることで、普陀落山の海辺の岩上でくつろぐ「水月観音」という形式であることが分かります。宋代以降に中国で好まれ、明清期を通じて数多く作られた図像で、信仰の対象としてだけでなく、鑑賞用の仏教美術としても長く愛されてきました。
鑑定のポイント―清代の作と判断した理由
当店では、外部の鑑定書や伝来の肩書きに頼るのではなく、実際に手に取り、鋳造や意匠の細部を見て時代を判断することを大切にしています。本品については、透かし彫りを多用した宝冠の意匠、肉づきの柔らかな面相の彫り込み、瓔珞や飾り紐が幾重にも重なる豪華な装飾が、中国清代の金銅仏教彫刻に共通する特徴として確認できました。明代の作例に比べて装飾がより密になる点も、時代を見極める上での手がかりの一つです。
像底の断面からは中空鋳造の技法もうかがえ、手の込んだ工程を経て作られていることが分かります。表面は鍍金を施さない黒褐色の地肌で仕上げられており、これも清代の観賞用仏像にしばしば見られる仕上げです。台座の唐木に生じた干割れも、長い年月を経た素材であることを裏付けています。
発見のエピソード
このお品は、後継者がなく畳まれることになったお寺の片付けの中で見つかりました。ご本尊としてお祀りされていたものではなく、本堂の片隅に他の古い品々とまとめて置かれていた、コレクションの一部だったとのことです。長らく日の目を見ずにいたお品ではありますが、状態は良好で、鋳造当初の細工がしっかりと残っていました。こうした場所で状態の良いお品に出会えることも、この仕事ならではだと感じています。
このような一点物との出会いを大切に
中国の仏教美術、とりわけ明清期の作例は、後年に写された品も少なくなく、見極めには経験が欠かせません。当店ではこれまでも、中国明清期の金銅仏や陶磁器、書画など、さまざまな分野の逸品のお買取りに携わってまいりました。今回の水月観音坐像も、そうした積み重ねの中で自信を持ってお引き受けできたお品の一つです。
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