楼閣山水賢人図朱塗対花入
【熊本県荒尾市買取】
明治・大正期の逸品:熊本県荒尾市で買取の楼閣山水賢人図朱塗対花入 ~美術骨董買取の現場から~
こんにちは。福岡県福岡市中央区大宮にある「日本中国美術骨董品アジアアート」の買取担当です。今回は、熊本県荒尾市での出張買取の事例をご紹介します。美術品や骨董品の魅力、そして私たちの買取に対する姿勢をお伝えできればと思います。
荒尾市の歴史と美術品との関わり
熊本県荒尾市は、かつて三井三池炭鉱の町として栄えた歴史ある地域です。明治から昭和にかけて、多くの富裕層が形成され、質の高い美術品や骨董品が集まった土地柄でもあります。特に中国美術品や日本の伝統工芸品が多く見られ、私たちの出張買取でも興味深い作品に出会うことが少なくありません。
荒尾市には、江戸時代から続く旧家も多く、そうした家々には代々受け継がれてきた貴重な美術品や骨董品が眠っています。茶道具や掛軸、陶磁器など、様々なジャンルの品々が、時代の移り変わりとともに大切に保管されてきました。
また、荒尾市は有明海に面しており、古くから海上交通の要所として栄えてきました。そのため、中国や朝鮮半島からもたらされた美術品や骨董品も多く見られます。こうした地理的・歴史的背景が、荒尾市の美術品・骨董品の特徴の一面を形作っているのかも知れません。
お客様からのご依頼
今回、荒尾市にお住まいのお客様から出張買取のご依頼をいただきました。お電話での内容は「祖父の代から住んでいる古い家の納屋を整理したいが、戦前からの品々が大量にあって…」というものでした。ご依頼者様は、代々荒尾市の地元にお住まいされており、ご先祖から受け継いだ品々の整理に頭を悩ませていました。
私たちは一先ず、出張査定をお約束し、後日、お約束の日に現地に向かいました。
かつて細川氏が治めた肥後国(現在の熊本県)は、豊かな文化が花開いた土地。茶道具や書画、陶磁器など、数々の名品が生み出されてきました。そんな土地柄だけに、今回の買取にも期待が高まります。
荒尾市に近づくにつれ、かつて炭鉱町として栄えた名残を感じさせる景観が目に入るようになりました。閉山後も地域の歴史を伝える建造物が残され、独特の雰囲気を醸し出しています。この地で、どのような美術品や骨董品と出会えるのか。好奇心と期待感を胸に、我々は目的地へと向かいました。
現場到着 – 予想以上の状況
現地に到着すると、長い歴史を感じさせる古民家が私たちを出迎えてくれました。庭には年輪を重ねた松の木があり、この地域の文化と伝統を静かに物語っているようでした。
ご依頼者様に案内されて向かった納屋は、母屋からやや離れた場所にありました。扉を開けると、むっとした空気と共に、長年人の手が入っていない様子が伺えました。天井近くまで積み上げられた箱や家具、埃をかぶった古道具の山…。その光景は、まるで時が止まったかのようでした。
2階への階段を見上げると、長い年月を物語るような趣が感じられました。「ここ30年ほど、2階はほとんど使っていないんです」と教えてくださいました。
安全を確保しながらの作業となるため、通常よりも時間がかかることをご説明し、ご了承いただきました。私たちは慎重に作業を進めることにしました。
まず、1階の大きな箪笥を移動し、弱ったはしご階段の裏側下部に固定します。これで何とか2階への昇降が可能になりました。手袋、マスクを装着し、懐中電灯を手に、2階へと足を踏み入れます。
2階は天井の低い空間に、びっしりと箱や家具が詰め込まれています。こうした状況は数えきれないほど経験済みですので特に気にすることもなく、ただお宝が眠っていないか、その可能性を感じるものがないか目を光らせて見渡します。
楼閣山水賢人図朱塗対花入との出会い
約3時間の作業を経て2階からの荷物の下ろしを終え、1階で検品作業を開始しました。奥まった場所から運び出した荷物から、一対の花瓶が姿を現しました。厚い埃をかぶっていましたが、その下から朱塗りの美しい色彩が垣間見えます。慎重に埃を払うと、そこには見事な「楼閣山水賢人図朱塗対花入」の姿がありました。今回ご紹介のお品になります。
この花瓶は、明治から大正期に作られた工芸品です。朱塗りの地に金で楼閣や山水、そして賢人たちの姿が描かれており、当時の日本人の中国文化への憧れが感じられる作品です。
ご依頼者様に花瓶の由来を尋ねると、「祖父の代までは床の間に飾っていたそうですが、私の代になってからはこの納屋で眠っていました」とのこと。その言葉を聞きながら、この花瓶が見てきた時代の流れに思いを馳せます。
作品の魅力と価値
「楼閣山水賢人図朱塗対花入」は、一見すると数物の工芸品に見えるかもしれません。しかし、その歴史的背景や芸術性には興味深いものがあります。
明治から大正期は、日本が急速に近代化を遂げる一方で、伝統的な美意識も大切にされていた時代です。この花瓶は、そんな時代の空気を反映した作品と言えます。朱塗りの鮮やかな色彩は、当時の人々の美意識を表現しています。また、中国の伝統的な題材である楼閣山水や賢人の図柄は、日本人の中国文化への敬意と憧れを示しています。
特に注目したのは、金で描かれた繊細な装飾です。楼閣の屋根の反りや、山々の起伏、賢人たちの表情まで、細やかな筆致で表現されています。これらの細部は、当時の職人の高い技術力を物語っています。
また、この作品が一対で残されていることも価値を高めます。美術品や骨董品の世界では、本来一対であるべきものが揃って残っていることは稀で、そのような作品は高く評価されます。
確かに、本体や外箱の状態は決して良いとは言えません。長年の保管によるダメージは避けられませんでした。朱塗りの表面にはいくつかの傷や欠けが見られ、金彩の一部も剥げ落ちています。外箱も湿気によるシミや歪みが目立ちます。
しかし、私たちはこの作品の持つ歴史的、文化的価値を重視します。明治・大正期の工芸品として、また日本と中国の文化交流を物語る資料として、十分な価値があると判断しました。
買取価格の決定
慎重に査定を行った結果、買取価格を10,000円と設定させていただきました。一般的な骨董品店では、状態の悪い漆器の工芸品としてまとめ買いの対象となり、ほとんど買取価格が付かない可能性もあります。
しかし、私たち「日本中国美術骨董品アジアアート」では、作品の持つ背景や価値を十分に考慮し、適正な価格をお付けすることを心がけています。この価格には、以下のような要素が考慮されています:
1.明治・大正期の工芸品としての歴史的価値
2.一対で残されていることによる希少性
3.日本と中国の文化交流を示す資料としての価値
4.細密な装飾に見られる高い技術力
また、この価格設定には、修復費用も考慮されています。適切な修復を施すことで、再市場化がしやすくなります。
お客様の反応
買取価格をお伝えすると、ご依頼者様はほっとされたご様子で、「正直、こんな古い物に値段が付くとは思っていませんでした。ダメなら処分しようと思っていたので、大切に扱ってもらえるなら嬉しいです」とおっしゃっていただきました。
さらに「実は他の買取店にも声をかけたのですが、納屋を見て10分ほど立ち話しで断られてしまって…。こうして一つ一つ丁寧に見ていただけて本当にありがたいです」と語ってくださいました。
私たちは、お客様の大切な思い出の品を引き継がせていただくことの責任を強く感じました。この作品を通じて、明治・大正期の工芸品の魅力を多くの方々に伝えていきたいと思います。
作業を終えて
5時間にわたる作業を終え、ご依頼者様に深く感謝をお伝えしました。「楼閣山水賢人図朱塗対花入」以外にも、いくつかの骨董品や美術品を買い取らせていただきました。中でも、幕末期の武士の家紋入り甲冑や、江戸後期の茶道具一式なども、貴重な発見でした。
古い家屋の整理は大変な作業ですが、私たちがお手伝いできることを嬉しく思います。ご依頼者様からは「長年気になっていた納屋の整理ができて本当に助かりました。昔の品々が新たな形で生きていくと思うと感慨深いです」というお言葉をいただきました。
出張買取の意義
今回の事例は、出張買取の重要性を改めて感じさせるものでした。「日本中国美術骨董品アジアアート」では、福岡県を中心に、熊本県など九州全域で出張買取を行っています。その理由は主に以下の3点です:
1.お客様の手間を省く:大切な品々を店舗まで持ち込む手間と危険を避けられます。
2.現地での適切な査定:作品が置かれていた環境や、関連する品々を総合的に見ることで、より適切な査定ができます。
3.埋もれた価値の発見:お客様自身が価値を認識していない品々の中から、貴重な作品を見出すことができます。
特に3点目は、今回の「楼閣山水賢人図朱塗対花入」のケースにも当てはまります。一見すると古びた花瓶でも、その歴史的・文化的背景を知ることで、適切な価値評価ができるのです。
美術品・骨董品の魅力
美術品や骨董品は、単なる「古い物」ではありません。それぞれの品に、作り手の思いや、持ち主の歴史が刻まれています。「楼閣山水賢人図朱塗対花入」も、明治・大正期の職人の技、当時の日本人の中国文化への憧れ、そしてご依頼者様の家族の歴史を語る貴重な品です。
私たち「日本中国美術骨董品アジアアート」は、こうした品々の新たな旅立ちをお手伝いすることを仕事にできて幸いです。買い取らせていただいた品々は、必要に応じて修復や手入れを施し、その価値を理解し大切にしてくださる新たな持ち主へとつないでいきます。
最後に
この「楼閣山水賢人図朱塗対花入」の買取事例は、私たち「日本中国美術骨董品アジアアート」の買取業務の日常を知っていただくためにご紹介させていただいています。状態が完璧でなくても、作品の持つ価値を正当に評価し、適切な価格で買い取ることを心がけています。
私たちが取り扱う美術品・骨董品は多岐にわたります。陶磁器、掛軸、絵画、中国美術品、茶道具、刀剣など、幅広いジャンルの作品を扱っています。また、出張買取や出張査定のサービスも、福岡県を中心に熊本県など九州全域で展開しています。
ご自宅に眠っている古い品物、先祖代々受け継いできた美術品など、「これって価値があるのかな?」と思われているものがありましたら、ぜひ一度ご相談ください。丁寧な査定と適正な価格での買取を心がけております。
出張買取、出張査定は無料で承っております。お気軽にお問い合わせください。「日本中国美術骨董品アジアアート」が、お客様の大切な品々の新たな旅立ちをお手伝いいたします。
お問い合わせ先: 日本中国美術骨董品アジアアート
〒810-0013 福岡県福岡市中央区大宮2-6-19
アリエス平尾第二ビル1階
TEL: 092-534-8188
営業時間: 10:00~19:00(年中無休)
美術品・骨董品には、それぞれに物語があります。その物語を大切に受け継ぎ、次の世代へとつなげていく。それが私たちの仕事です。皆様の大切な品々の新たな物語の始まりを、私たちにお任せください。引き続きよろしくお願い申し上げます。