藤田嗣治「小さな職人たち」
【福岡県福岡市城南区買取】
藤田嗣治『小さな職人たち』シリーズ「すみれ売り」の買取事例
春の陽気が漂う午後、当店「日本中国美術骨董品アジアアート」に一本の電話が入りました。「藤田嗣治の版画を持っているのですが…」とおずおずと話し始められたのは、福岡市内にお住まいの70代の女性でした。
「藤田嗣治といえば、20世紀を代表する日本の画家ですね。どのような作品をお持ちでしょうか?」と私どもスタッフが尋ねると、「『小さな職人たち』というシリーズの中の『すみれ売り』という作品なんです」との返答。その瞬間、私たちの心は躍りました。
藤田嗣治の『小さな職人たち』シリーズは、1960年代に制作された21点からなる木版画集です。パリで活躍した藤田が、フランスの日常生活や職人たちの姿を愛情豊かに描いたこのシリーズは、彼の晩年の傑作として知られています。その中でも「すみれ売り」は、春の訪れを告げる可憐な花を売る少女の姿を、藤田独特の繊細な線で表現した人気の高い作品です。
「ぜひ一度拝見させていただけませんでしょうか」とお願いすると、快く了承してくださいました。翌日、ご自宅に伺うと、素敵な額装に収められた「すみれ売り」が私たちを出迎えてくれました。
作品を丁寧に拝見させていただくと、版画特有の深みのある色彩と、藤田の代名詞とも言える繊細な線描が見事に保たれていました。「40年以上前に、天神の百貨店で開催された藤田嗣治展で主人と二人で購入したんです」とお客様。「主人は亡くなってしまいましたが、この作品を見るたびに、パリで過ごした新婚旅行を思い出すの」と、しみじみと語られました。
藤田嗣治は1886年東京生まれ。20代でパリに渡り、エコール・ド・パリの一員として活躍しました。独特の乳白色の背景に繊細な線描で描かれた裸婦像で一世を風靡し、「フジタ」の名は世界中に轟きました。晩年はフランスに帰化し、レオナール・フジタの名で親しまれました。
「すみれ売り」が収められた『小さな職人たち』シリーズは、そんな藤田が70代に入ってから手がけた作品です。パリの日常を愛情たっぷりに描いたこのシリーズは、藤田の円熟した技術と、フランスへの深い愛着が感じられる珠玉の作品群といえるでしょう。
作品の状態を細かくチェックし、版画の刷りの良さ、紙の状態、サインの確認など、専門的な見地から鑑定を行いました。幸いなことに、この作品は非常に良好な状態で保管されており、藤田の繊細な表現がしっかりと残されていました。
「大切にされてきたのがよくわかります。素晴らしい状態ですね」とお伝えすると、お客様は少し寂しそうな、でも誇らしげな表情を浮かべられました。「手放すのは寂しいけれど、次の方にも大切にしてもらえたらいいな」
私どもは、作品の芸術的価値、市場での需要、状態などを総合的に判断し、お客様にご納得いただける買取価格を提示させていただきました。藤田作品の中でも人気の高いこのシリーズは、美術館やコレクターからの需要も根強く、その価値は年々上昇傾向にあります。
お客様は少し考えられた後、「ここなら安心して託せます」と、買取に同意してくださいました。「夫婦の思い出の品ですが、新しい持ち主の方にも、きっと素敵な思い出を作ってもらえると思います」というお言葉に、私どもも身の引き締まる思いがいたしました。
このような形で、藤田嗣治の『小さな職人たち』シリーズ「すみれ売り」を買い取らせていただきました。一つの作品に込められた藤田の技巧と、そしてそれを大切に守ってこられたお客様の想い。そのどちらもが、私たち「日本中国美術骨董品アジアアート」の財産となりました。
美術品や骨董品には、作者の想いだけでなく、所有者の人生や記憶も刻まれています。私たちは単なる買取だけでなく、そうした作品の歴史や物語もしっかりと受け継ぎ、次の所有者へとつなげていく。それが私たちの使命だと考えています。
あなたの大切なお品物にも、きっと素晴らしい物語があるはずです。もし、美術品や骨董品の買取をお考えでしたら、ぜひ「日本中国美術骨董品アジアアート」にご相談ください。藤田嗣治作品に限らず、日本画、洋画、茶道具、古美術など、幅広いジャンルに対応しております。特に高額な一点物や、珍しい作品についても、豊富な経験と専門知識を活かして、適切な査定をさせていただきます。
福岡市を中心に、九州一円はもちろん、全国どこからでもお問い合わせをお待ちしております。あなたの大切な作品の新たな物語を、私たちと一緒に紡いでいきませんか?