大清光緒年製中国辰砂釉花瓶

【長崎県伊万里市買取】

福岡の街に初夏の陽気が漂う6月のある日、「日本中国美術骨董品アジアアート」の店内に、柔らかな陽光が差し込んでいました。古美術品や骨董品が並ぶ店内は、静かな落ち着きに包まれています。そんな静寂を破るように、一本の電話が鳴り響きました。

受話器を取ると、聞き覚えのある声が聞こえてきました。「こんにちは。以前、宋代の鈞窯澱青釉盤を買い取っていただいた者ですが…」

その声を聞いた瞬間、私は半年前のことを思い出しました。その時お持ち込みいただいた宋代の鈞窯澱青釉盤は、実に見事な逸品でした。青と紫が溶け合うような神秘的な色合いは、今でも目に焼き付いています。

「ああ、はい。覚えております。あの素晴らしい鈞窯盤ですね。」と答えると、電話の向こうで微かな笑みが聞こえたような気がしました。

「今回は、清代の辰砂釉花瓶があるんです。見ていただけませんか?」

その言葉に、私の心は躍りました。辰砂釉と聞いて、真っ先に浮かんだのは、あの幻想的な深い赤色でした。中国陶磁器の中でも、辰砂釉は特別な存在です。その美しさは多くの人を魅了し、同時に製作の難しさゆえに希少価値も高いのです。

「ぜひ拝見させていただきたいのですが…」と申し上げると、「今回は伊万里市にある保管場所にあるんです。そちらまで来ていただけますか?」という返事。

即座に「はい、伺わせていただきます」と答えました。美術品や骨董品の世界では、このような臨機応変な対応が求められます。お客様の大切な品を、適切に評価するためには、どこへでも足を運ぶ覚悟が必要なのです。

電話を切ると、同僚に声をかけました。「伊万里に行くよ。清代の辰砂釉花瓶があるそうだ」

同僚の目が輝きました。「辰砂釉ですか!楽しみですね」

私たちは急いで準備を整え、車で伊万里市へと向かいました。車中では、辰砂釉について話が弾みました。

「辰砂釉って、本当に難しいんですよね」と同僚。「銅を主原料として使うんですが、酸化銅だと緑色になってしまう。還元炎で焼成して、やっと赤色になるんです」

私も頷きながら続けました。「そうなんだ。しかも、窯の温度や酸素量、冷却速度など、ほんの少しの条件の違いで色が大きく変わってしまう。だから、昔の陶工たちは苦心惨憺したんだろうね」

「そうですね。特に、宋代の辰砂釉は『鮮血紅』と呼ばれるほど美しかったそうです。でも、その技術は一度失われてしまって…」

「そう、明代になってようやく復活したんだよね。今回見る清代の作品も、そういった歴史の積み重ねの上にあるんだ」

話をしているうちに、伊万里市に到着しました。案内された先は、一般的な住宅街の中にひっそりと佇む蔵のような建物でした。

お客様が出迎えてくださいました。「お待ちしておりました。こちらが私のコレクションルームです」とおっしゃると、重厚な扉を開けてくださいました。

中に入ると、そこはまさに美の殿堂でした。壁際には、唐木で作られた李朝棚が鎮座しており、その艶やかな木肌は長い年月を物語っていました。棚の中や周囲には、様々な時代や地域の陶磁器や青銅器が並んでいます。

「素晴らしいコレクションですね」と思わず声が出ました。

お客様は微笑んで「ありがとうございます。長年かけて集めてきたんです」と答えられました。「こちらです」とおっしゃりながら、李朝棚の扉を開けると…。

そこに現れたのは、まさに息を呑むほどの美しさを持つ辰砂釉の花瓶でした。高さは約20センチほど。その姿は端正でありながら、表面を覆う深い赤色は、まるで生き物のように光を吸収し、放出しているかのようでした。

花瓶の形状は、中国の伝統的な様式を基調としながらも、独特の個性を放っています。最も特徴的なのは、その四角い口元です。この角張った口元が、花瓶全体に端正さと気品を与えています。

首から胴にかけては、なだらかに広がりながらも、途中で緩やかに絞られ、再び膨らみを持たせた曲線を描いています。この曲線美は、まるで優雅な舞踏を思わせるようです。

底部に向かって再び絞られるフォルムは、全体のバランスを整え、安定感と同時に軽やかさも感じさせます。さらに、両側に配された小さな取っ手は、実用性と装飾性を兼ね備えた、中国陶磁器の伝統的な要素です。この取っ手も、本体と同様の釉薬で覆われ、全体の調和を乱すことなく、むしろ花瓶の品格を高めています。

最も目を引くのは、その艶やかな辰砂釉の色彩です。深い赤色を基調としながら、所々に青みがかった濃淡が走り、まるで滝のように流れ落ちる様は圧巻です。この青みがかった部分は「窯変」と呼ばれる、焼成過程で偶然生まれる美しい現象によるものです。

「大清光緒年製」と底に刻まれた銘。光緒帝の治世(1875-1908年)は、清朝最後の輝きの時代です。西洋の影響を受けつつも、伝統的な技術を極限まで磨き上げた時代の作品は、今でも多くのコレクターを魅了してやみません。

「実は、この作品には面白い逸話があるんです」とお客様。「光緒帝の寵臣だった李鴻章が、日清戦争の講和交渉のため来日した際、明治天皇に献上しようと持参したものの、結局献上されず持ち帰ったという伝承があるんです」

その言葉を聞いて、私たちは思わず顔を見合わせました。もしその伝承が真実なら、この花瓶は単なる美術品を超えた、歴史的な価値を持つ宝物と言えるでしょう。

慎重に作品を拝見させていただき、釉薬の色合い、器の形状、銘の彫り方など、細部にわたって確認していきました。ルーペを使って表面の細かな状態を観察したり、ライトを当てて釉薬の深みを確認したりと、専門的な見地から丁寧に調査を進めました。

その過程で、お客様との会話も弾みました。

「この辰砂釉の深い赤色は、本当に見事ですね」と私が言うと、お客様も頷いて「そうなんです。特に光の加減で、色の表情が変わるのが魅力的なんですよ」と答えられました。

同僚も「胴体部分に見られる縦方向の青い筋が、まるで山水画の滝のようで幻想的です」と感嘆の声を上げました。

お客様は嬉しそうに「そうそう、私もそう思うんです。この青い部分が、赤色全体に深みを与えているんですよね」

話は清朝の陶磁器制作の歴史や、当時の社会情勢にまで及びました。お客様の博識ぶりに感心すると同時に、私たちも知識を総動員して対話に臨みました。

「光緒年間は、伝統と近代化が交錯する興味深い時代でしたね」とお客様。

私も「はい、西洋の影響を受けながらも、こうして伝統的な技術を極めた作品が生まれたのは興味深いです」と答えました。

同僚も「当時の陶工たちの努力と創造性には、本当に頭が下がります」と付け加えました。

このように、美術品を通じて歴史や文化、そして人と人とのつながりを感じられることが、私たちの仕事の醍醐味です。

丁寧な調査と対話を経て、この稀少な作品にふさわしい買取価格を提示させていただきました。金額を伝えると、お客様は少し考え込むような表情を見せられました。

「正直、長年付き合いのある買取業者さんもいるんですが、アジアアート福岡さんには特別な魅力がありますね。こうして骨董品の話を深くできる場所って、最近めっきり少なくなってしまって…」

その言葉に、私たちは身が引き締まる思いがしました。単なる商売ではなく、美術品を通じて歴史や文化、そして人と人とのつながりを大切にする。それこそが、私たち「日本中国美術骨董品アジアアート」の存在意義なのだと、改めて実感したのです。

最終的に、お客様にもご納得いただき、この素晴らしい辰砂釉花瓶を、当店で買い取らせていただくことになりました。

慎重に花瓶を梱包し、お客様と別れを告げる頃には、外は夕暮れ時。伊万里の街に、柔らかな夕日が差し込んでいました。

車で福岡に戻る道中、同僚が言いました。「今日は本当に貴重な経験でしたね。こんな素晴らしい作品に出会えるなんて」

私も深く同意しました。「そうだね。でも、こういう出会いがあるからこそ、この仕事は面白いんだ」

「次は、どんな作品と出会えるでしょうかね」と同僚。その言葉に、私たちも心躍る思いがしました。美術品との出会いは、人生を豊かにする最高の贈り物です。そして、そんな素晴らしい出会いの橋渡しができることが、私たちの仕事の醍醐味なのです。

福岡に戻り、店に辰砂釉花瓶を安全に収めた後、私は今日一日を振り返りました。美術品や骨董品の世界は、単に古いものを扱うだけの仕事ではありません。それは、歴史との対話であり、文化の継承であり、そして人々の思いを紡ぐ仕事なのです。

今回の辰砂釉花瓶のように、一つ一つの品には物語があります。それを丁寧に紐解き、次の世代に伝えていく。そんな大切な役割を担っているのだと、改めて感じました。

皆様のお手元にも、もしかしたら素晴らしい美術品や骨董品が眠っているかもしれません。それは、中国陶磁器や日本の茶道具、あるいは近代絵画や浮世絵など、ジャンルは問いません。

「これって価値があるのかな?」「誰に相談したらいいんだろう?」そんな疑問をお持ちの方は、ぜひ「日本中国美術骨董品アジアアート」にご相談ください。私たちは、お客様の大切な品々に秘められた物語を丁寧に紐解き、その価値を最大限に引き出すお手伝いをいたします。

福岡を中心に、九州一円、そして全国どこからでもお問い合わせをお待ちしております。あなたの「いつか誰かに託したい」という思いを、私たちに託してみませんか? 新たな出会いと発見の扉が、きっと開かれることでしょう。

美術品や骨董品は、単なる「モノ」ではありません。それは、時代の空気を吸い、作り手の思いを宿し、持ち主の人生と共に歩んできた特別な存在です。そんな品々の新たな旅立ちに立ち会えることが、私たちの仕事の最大の喜びであり、誇りでもあります。

今回の辰砂釉花瓶との出会いは、私たちにとっても貴重な経験となりました。その深い赤色に秘められた歴史と技術、そしてお客様との対話を通じて得られた知識は、私たちの財産となります。こうした経験の積み重ねが、より多くのお客様に信頼されるサービスを提供することにつながるのです。

美術品や骨董品の価値は、単に金銭的なものだけではありません。それぞれの品が持つ文化的、歴史的な意義、そして持ち主との思い出や愛着など、目に見えない価値も大切にしています。私たちは、そういった多面的な価値を理解し、適切に評価できる専門家であり続けたいと考えています。

また、美術品や骨董品の世界は常に変化しています。新たな発見や研究成果によって、作品の評価が変わることもあります。そのため、私たちは日々勉強を欠かさず、最新の情報にアンテナを張り続けています。お客様に最適なアドバイスができるよう、知識と経験を磨き続けることが私たちの使命だと考えています。

「日本中国美術骨董品アジアアート」は、単なる買取店ではありません。私たちは、美術品や骨董品を通じて、過去と現在、そして未来をつなぐ架け橋でありたいと考えています。一つ一つの品に込められた歴史や文化、そして人々の思いを大切に扱い、次の世代へと引き継いでいく。そんな重要な役割を担っているという自覚を持って、日々の業務に取り組んでいます。

最後に、美術品や骨董品をお持ちの皆様へのメッセージです。あなたの大切な品々には、きっと素晴らしい物語が秘められているはずです。その物語を聞かせてください。私たちは、あなたの思いに耳を傾け、その品々の価値を最大限に引き出すお手伝いをさせていただきます。

「日本中国美術骨董品アジアアート」は、美術品や骨董品を通じて、人と人、過去と現在をつなぐ架け橋となることを目指しています。あなたの大切な品々の新たな物語を、私たちと一緒に紡いでいきませんか? お気軽にご相談ください。新たな発見と感動が、きっとあなたを待っています。

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