釜師佐藤清光作 万代屋鉄瓶
【福岡県福岡市中央区買取】
福岡市中央区の住宅街。7月のある日、梅雨明けの暑さが少し和らいだ午後、当店「日本中国美術骨董品アジアアート」のスタッフがお客様のお宅を訪問させていただきました。
今回お伺いしたのは、代々茶道を嗜まれてきたお客様のお宅です。玄関に入ると、落ち着いた雰囲気の中に通されました。応接間には、驚くほどたくさんの茶道具が丁寧に並べられていて、その中に今回の買取対象である「釜師佐藤清光作 万代屋鉄瓶」がありました。
この鉄瓶は、山形県出身の釜師、佐藤清光氏の作品です。佐藤氏は、伝統的な技法を基に、高度な「へら絞り」という技術を用いて、繊細な鋳肌と独特の形状の作品を生み出すことで知られています。特に万代屋鉄瓶は、その名の通り、長く使われることを願って作られた逸品です。
鉄瓶を拝見させていただくと、使用した形跡がほとんど見られず、黒褐色の表面が美しく保たれていました。蓋の摘みには小さな装飾が施されており、これが佐藤清光氏の作品の特徴の一つだと教えていただきました。
「この鉄瓶は祖父の代から大切に保管してきたものです。実際にはほとんど使用していません。」とお客様。確かに、長年使われた跡が見当たらないことから、未使用に近い状態であることが分かりました。
査定の合間に、お客様が丁寧にお茶を点ててくださいました。お茶をいただきながら、お客様から福岡の茶道文化についてお話を伺いました。
「福岡は昔から茶道が盛んでした。特に博多は、様々な文化が交わる場所だったので、独特の茶道文化が育まれてきたんです。」
確かに、博多は古くから貿易で栄えた場所です。そのため、地元の職人たちが独自の技を磨き、特色ある茶道具を作り出してきたそうです。
お茶をいただきながら、茶道具の歴史や価値について多くのことを学ばせていただきました。同時に、私たちの茶道の知識不足も痛感し、もっと勉強する必要があると感じました。
興味深かったのは、お客様から伺った他の買取業者の対応についてです。「先日、別の買取業者さんに来ていただいたのですが、商品の扱いが雑で…。さっと見て、全部でいくらです、といった対応だったので、お断りしました。」
実際、置いてあった茶道具の桐箱の紐の結び方が不自然で、最近誰かが触った形跡がありました。大切に受け継がれてきた品々をこのように扱われては、お客様が不快に感じるのも当然です。
この経験から、私たちは改めて自分たちの仕事の重要性を認識しました。茶道具は単なる道具ではなく、長い歴史と文化が込められた価値ある品々です。その価値を正しく理解し、丁寧に扱うことが、私たちの仕事の本質だと再確認しました。
当店では、スタッフ全員に次のような指導を徹底しています。茶碗は必ず両手で持つこと、道具を傷つけないよう腕時計や指輪などのアクセサリーは外すこと。基本的なことですが、お客様の大切な品々を扱う上で、非常に重要な心得です。
最後に、美術品や骨董品をお持ちの方々へのお願いがあります。片付けや処分を考える前に、ぜひ専門家にご相談ください。一見価値がないように思えるものでも、実は貴重な品である可能性があります。当店「日本中国美術骨董品アジアアート」では、福岡市を中心に、丁寧な査定と適切な評価を心がけております。
今回の万代屋鉄瓶のように、代々受け継がれてきた品々には、それぞれに歴史があります。その歴史を大切に聞き、次の方へと引き継ぐお手伝いをすることが、私たちの役割だと考えています。お客様の大切な品々の新たな出発を、私たちにお任せいただければ幸いです。