中国古画雁図二幅對掛軸
【長崎県佐世保市買取】
佐世保の四季を映す物語 – 中国宋代の古画との出会い
佐世保の街並みが秋色に染まり始めたある日、私たちは一本の電話を受けました。「覚えていらっしゃいますか?昨年お話しした骨董品の件で…」
その瞬間、一年前の記憶が鮮明によみがえりました。確かにお客様は「家具や家電の処分が済んだら、次は骨董品の整理をしたい」とおっしゃっていました。その時をしっかりと覚えていたことをお伝えすると、電話の向こうで安堵の声が聞こえました。
「よかった。ようやくその時が来たんです」
約束の日、私たちは静かな住宅街に佇む古い日本家屋を訪れました。玄関先に立たれたお客様の表情には、少し寂しさと懐かしさが混ざっているようでした。
「実は、もう何年も使っていない家なんです。この一年で家具や家電はほとんど片付いたんですが、こういった古いものは…」
お客様が指し示した先には、長年大切に保管されてきたであろう骨董品の数々。その中でひときわ目を引いたのが、端正な趣きの中国古画でした。
「これ、雁が描かれているんですよね。祖父が大切にしていたものなんです」
二幅で一対となった掛軸には、季節の移ろいを感じさせる情景が描かれていました。左幅には、雪を被った岩肌の険しい山々と草木が見え、冬の厳しさを表現しています。一方、右幅には枯れ木のような木立ちに、わずかに赤い花が三輪ほど咲いており、春の訪れを予感させます。そして、それぞれの掛軸の下部に、静かに佇む雁の姿が見えます。画面全体が落ち着いた色調で描かれており、この静謐な雰囲気が、季節の移り変わりと自然の循環を物語っているかのようです。
「この掛軸を見ていると、佐世保の移りゆく四季を思い出しますね」
そう口にすると、お客様も懐かしそうに微笑まれました。
「そう言えば、子供の頃、祖父とよく西海橋に行ったものです。『ここから見える大村湾の景色は、四季折々で美しいんだ』って。冬の厳しい風にさらされた海も、春の柔らかな日差しに輝く海も、祖父は『この景色をずっと覚えておきなさい。どこに行っても、故郷の美しさは忘れないものだよ』なんて言っていました」
お客様は懐かしそうに続けました。
「その後、西海橋公園ができて、もっと多くの人が一年中景色を楽しめるようになりましたね。この掛軸の風景を見ていると、あの頃の大村湾の移りゆく季節の眺めを思い出します。祖父の言葉通り、この景色は今でも心に残っています」
お客様の思い出話に耳を傾けながら、私たちはこの掛軸の価値を慎重に査定していきました。外箱に「宋」と記されていることから、中国宋代の作品である可能性が高いことがわかりました。筆致の確かさ、二幅で対をなす構図の妙、そして何より、長年大切に保管されてきた状態の良さ。これらを総合的に判断し、その価値をお伝えすると、お客様は満足そうに頷かれました。
「やはり、慌てて処分せずに良かったです。一年前、片付け業者さんに頼んでいたら、ただの古い掛軸として扱われていたかもしれません」
お客様の言葉に、私たちは深く共感しました。お屋敷の整理を進める中で、こうして大切な品々の価値を見出し、次の世代に引き継ぐ機会を作られたお客様の判断に、心から敬意を表します。
「お客様のように、骨董品の整理を慎重に進められる方は本当に素晴らしいです。多くの方が、こういった骨董品は売り方一つで価値が大きく変わることをご存知ないんです」
お客様は微笑んで答えられました。「祖父の大切にしていたものですから。きっと、他の方々にも同じように大切な品があるのでしょうね」
その言葉を聞いて、私たちは改めて自分たちの仕事の重要性を実感しました。骨董品は、一度市場から失われると二度と戻ってこない。その一点物の価値を見出し、次の世代に引き継ぐ。それが私たちの使命なのです。
お客様は「他にもいくつか気になる品があるんです」と奥の間へと案内してくださいました。
その日、私たちは佐世保の歴史と、一つの家族の思い出が詰まった宝物たちと出会いました。そして、これらの品々が新たな持ち主のもとで大切にされることを願いながら、静かに包装を始めたのです。
皆様のお家にも、こんな素晴らしい「宝物」が眠っているかもしれません。お屋敷整理中に思い切って片付けてしまいたいときもありますが、その時はよくお考えください。片付けや処分を考える前に、ぜひ一度、私ども「日本中国美術骨董品アジアアート」にご相談ください。たとえ時間がかかっても、あなたの大切な思い出と、日本の文化遺産を、一緒に守り、次の世代へつなげていきましょう。