目貫 伝後藤派赤銅地金色絵陰陽根一匹獅子

伝後藤派赤銅地金色絵陰陽根一匹獅子図目貫(鑑定書付)です。後藤家伝統の構図を赤胴地に、上手の鏨彫、金色絵を施した、陰陽根を持つ作品です。
後藤家の獅子図は、数いる刀装金工の獅子図のお手本となっていて、古くは室町時代の足利将軍家に仕えた後藤家初代「祐乗」で、五百年以上も前になります。祐乗は、足利義政に仕え、法橋、法印、等の官位に叙せられた名工で、当時、刀装具の素材として用いられていた鉄の代わりに、赤銅や金を素材に用い、彫の技法も新機軸を生み出します。小柄、笄、目貫を作成しますが、鐔、縁頭は作品を残していません。構図は「龍」、「獅子」、の高肉彫が多く、金無垢素材、赤銅素材金色絵の作品を残しています。また在銘の作品は無いと云われています。
この「祐乗」を祖とする後藤家は、以降、宗乗−乗真−光乗−徳乗−栄乗−顕乗−即乗−程乗−廉乗−通乗−寿乗−延乗−桂乗−真乗−方乗−典乗と、幕末まで十七代続き、足利家、豊臣家、徳川家の将軍家御用を務めたことから「家彫」と云われ、その他金工とは区別され格式を重んじられました。
一方で代々の後藤家の作品は、その格式や伝統に縛られ、創造性や個性の面で画一的なものに陥ってしまった感があります。江戸時代中期以降、土屋、石黒、加納、後藤一条、等の町彫師が台頭し名品を残していますが、これらの刀装金工にも後藤家の意匠が大きく関係している事は疑いようの無い事実です。
なお、祐乗、宗乗、乗真、の三人は、特に上三代(古後藤)と呼ばれ、武家の間で好まれ、現代でも別格の扱いを受けています。先に述べたように、上三代の作品には銘が無く、真贋などの鑑定の際は、個体の作域や陰陽根の有無で判断するしかなく、大変困難なものとなっています。